相続税について

2017年9月16日 土曜日

相続法改正と2次相続

本日のブログは、今議論されている相続法の改正の話です。
先日、民法の債権法分野が120年ぶりに抜本的に改正されたことは記憶に新しいと思います。
(平成29年5月26日に参議院可決により成立、ただし公布より3年以内に施行予定)
現在、民法の相続法分野についても改正の議論がなされています。

法制審議会の審議状況をお伝えするホームページはこちら。
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00294.html
問題意識は第1回目の部会の配布資料を見ていただくと分かります。
http://www.moj.go.jp/content/001231522.pdf

議論されている論点は概ね以下のとおりです。
 ①相続における配偶者の立場の強化(居住権の保護、法定相続分の見直し)
 ②寄与分制度の見直し(特に療養看護について)
 ③遺留分制度の見直し(複雑な制度の見直し、地裁の管轄の当否)
 ④相続人以外の者の貢献の考慮
 ⑤預貯金等の可分債権の取扱い
このうち、⑤については、このブログでも紹介しましたとおり、預貯金債権は相続により当然分割とはならず、遺産分割の対象となるとの最高裁判決が出て、司法の方で先に結論が出ました。
いろいろ面白い議論がなされているのですが、本日は①に関連してコメントしたいと思います。

例えば、ご家族でお父さんが亡くなると、その配偶者と子供が相続します
これを一般的に1次相続といい、お母さんも亡くなって子どもたちで相続する時のこと2次相続といいます。
実務的な観点で言うと、相続において揉める、話合いがまとまらないのは圧倒的に2次相続の場面が多いです。
親のどちらかが生きている間は、子供たちも揉めないのですね。
また、1次相続では相続税の配偶者控除(注)を使えますので、一般的な遺産額であれば相続税の心配もあまりいりません

たしかに、相続法改正の①のとおり、配偶者には確かに保護を厚くする要請もあるでしょう
しかし、1次相続において配偶者に集中して相続させると、2次相続では相続税における配偶者控除が使えませんから、税務的に考えてもデメリットも多いです。
また、1次相続で子どもたちにもある程度相続させることは、子どもたちの不満の解消というメリットもあります。

政府は、平成27年に相続税法を改正し、相続税の徴収を拡充することで舵を切っています。
相続法分野の改正はまだ確定ではありませんが、まさか配偶者の相続分を増やして2次相続の時に相続税を徴収しようという意図はないでしょうね。
今後も、国・政府の方針とは別個に資産の防御という観点がますます必要になるでしょう。

(注)配偶者控除とは配偶者が相続した財産が1億6千万円以下または1億6千万円を超えた場合であっても法定相続分までなら相続税額がゼロという制度
    配偶者控除額=相続税の税額×(次のABいずれか少ない金額÷課税価格の合計)
 A 配偶者の法定相続分(法定相続分が1億6000万円未満なら1億6000万円)
 B 配偶者の課税価格(配偶者が相続する財産分) 


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2016年12月29日 木曜日

事業承継税制について

今回は、経営承継円滑化法における中小企業の事業承継の支援施策のうち、事業承継税制についてのブログになります。

これまで、事業承継については、以下のブログを書いてきました。
事業承継と遺留分対策について
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/08/post-56-1301665.html
経営承継円滑化法の手続と問題点について
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/10/post-61-1339795.html

事業を承継する方にとっては、株式等の相続によて企業を承継したものの、相続税の負担が過大となると、事業の継続自体が危ぶまれ、ひいては従業員の雇用自体も失われる結果となります。
今回お話しする事業承継税制は、後継者が、経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式等を現経営者から相続または贈与により取得した場合において、相続税・贈与税の納税が猶予される特例制度のことです。
遺留分の民法特例よりは利用されるケースが多いようで、平成20年10月から平成28年3月までの利用実績が、相続894贈与626となっています(中小企業庁発表)。
後継者が死亡したときや、後継者が次の後継者(3代目)に贈与したときには、相続税や贈与税が免除されることもあり、それだけメリットがあるということでしょう。

<相続税の納税猶予制度>
後継者が納付すべき相続税のうち、相続により取得した非上場株式等に係る課税価額の80%に対応する額が納税猶予されます。
<贈与税の納税猶予制度>
後継者が納付すべき贈与税のうち、贈与により取得した非上場株式等に係る課税価額の全額に対応する額が納税猶予されます。

いずれも相続・贈与前から後継者が既に保有していた議決権株式等を含め、発行済み議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分に限られます

これらの適用を受けるには、相続税・贈与税の申告期限から5年間は、以下の要件を満たして事業継続を行うことが必要です。
①雇用の8割以上を5年間平均で維持(毎年維持から緩和されています)。
②後継者(親族以外にも拡充されています)が代表を継続
(贈与税の場合)先代の経営者が代表者を退任(有給の役員としては残留)
④後継者が対象株式を継続して保有
⑤上場会社、資産管理会社、風俗業を行う会社ではないこと

以上の特例を受けるためには、経済産業大臣の認定相続税または贈与税の申告期限までの申請納税猶予から5年間継続届出書を税務署に提出することが必要です。
事業承継税制を含めたトータルの事業承継のお悩みについても、お気軽にお問い合わせください。


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2016年3月25日 金曜日

行きすぎた相続税節税対策

今回はタワーマンションを利用した相続税節税についてのブログです。

ここ数年タワーマンションの建築に伴い、相続を控えた高齢の方がタワーマンションを購入して相続財産の評価額を圧縮し、相続開始後間もなく売却するということが相続税節税スキームとしてもてはやされています。

相続財産の評価については、相続税法22条により、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」とされます。
そして、不動産については、その時価の定義は、国税庁の定める財産評価基本通達により、「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいう」とされ、「その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」ととされます。

そこで、同通達によると、マンションなど区分所有権については、建物の専有部分の評価は固定資産評価額を基に決められます。
他方、土地は路線価により評価されますが、マンションの場合その敷地面積をマンション各戸の床面積の割合で割りますので、こま切れの土地の評価になります。
タワーマンションの場合は、階数が多い分戸数も多くなるため、各戸の土地の持分はさらにこま切れとなり、その評価額は通常のマンションより圧縮されます
そして、通常、タワーマンションは上層階の方が眺望や日照の面から高値で売買されますが、建物の相続税評価において高層階と低層階の違いはありませんので、例えば最上階で3億円の物件が相続税の評価では5000万円ということが起こりうるわけです。
これを賃貸に出していると、土地部分は貸家建付地の評価を受け建物部分は貸家評価を受けることから、さらなる圧縮が可能となります。

しかし、あからさまに相続税の節税対策として上記の「からくり」を利用したケースでは当局から否認される例もあります。
例えば、平成23年7月1日の国税不服審判所で否認されたケースがそうです。
この審判では、被相続人が一度もマンションを訪問していないこと相続人が相続開始の4か月後に媒介契約を締結して売り出していることなどを理由に相続税の負担を回避するためにマンションの購入がなされたことを認め、マンションの評価額をその取得価格である2億9300万円としました相続税申告額は5800万円とのことですので、大きな負担増です。
このケースでは被相続人がマンションを使用収益していれば異なる判断が出された可能性もそれなりにあったと思われます。

もちろん、国税庁も何らの対応をせずに手をこまねいているわけではありません。
以下のニュースのとおり、今後、通達の改正などがなされる可能性は高いでしょう。
「国税庁や、マンションの財産評価に関係する総務省は、物件の実勢価格に合わせて例えば20階は1階より1割増し30階は2割増しという形で評価額が上がるよう補正する案などを検討している。税負担は高層階ほど重くなり、低層階では軽くなることも想定される。国税庁の松山清人・資産評価企画官は『不公平にならないような改正を検討したい』と話す。」
(以上、平成28年2月16日付朝日新聞から引用)


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2014年8月22日 金曜日

用語の意味について

 今回は小規模宅地等の特例にでてくる、用語の意味について説明したいと思います。
 何気なく使われている用語でも、細かく要件が決まっています。

 そもそも、「親族」って何でしょうか。どこまでが親族でしょうか。
 民法では、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族親族として定義されています。
 親等表というものがありますので、それを見れば簡単に分かります。横浜市がホームページで公開している親等表がこちらです。血縁関係があったり、あるいは結婚していれば、かなりの範囲で親族となることが分かります。税法でも基本的には同一の範囲になります。

 「貸付」という概念もよく出てきますが、1円でも賃料を支払えば有償の貸付けとして認められるのでしょうか。
 特例の適用を受ける不動産の貸付は、相当の対価を得て継続的に行うものに限られています
 賃貸借ではなく、使用貸借で貸し付けられている宅地等に特例の適用はありません。従って、賃料が1円の場合は相当の対価とはいえず、使用貸借と認定され、特例の適用が受けられなくなります。
 相当の対価とは、固定資産税その他の必要経費を回収した後において、相当の利益を生じるような場合をいうとされています。特定同族企業事業用宅地等の特例の適用を受けようとして、オーナー企業に貸付けを行う場合は要注意ですね。近隣の相場も検討して、賃貸借契約書を作成しておくべきでしょう。

 「生計を一にする」というのも、どういう意味でしょうか。
 これも税法上の概念です。所得税法基本通達2-47では、「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居している者に限りません。勤労、修学、療養等の理由で同居していなくても、その余暇には当該親族の元で起居を共にすることを常例としている場合や、親族間で常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合が「生計を一にする」親族に含まれるとしています。
 また、親族が同居している場合でも、明らかに互いに独立した生活を営んでいる場合は、「生計を一にする」親族に含まれないとされています。

 いやいや、細かい話ですね。


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2014年8月21日 木曜日

小規模宅地等の特例について(特定事業用の宅地)

 前回のブログでは、被相続人所有の土地が、貸付事業用に供されていた貸付事業用の宅地等の特例を取り上げました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/08/post-27-965133.html
 
 今回は、小規模宅地等の特例の最後、特定事業用宅地等の特例を取り上げます。
 特定事業用宅地等の特例は、イメージでいうと、被相続人が自分名義の土地上で不動産貸付業以外の商店や飲食店をやっていたケースが典型的です。このケースでは要件を満たすと、400㎡を限度面積として80%の減額があります。
 ただし、実務的にはあまり多くないといわれます。その理由は、事業をしていてある程度の売上げが出てくると法人の形態にすることから、相続税の申告を検討するような資産がある場合は、実際には「法人成り」をしており、前回のブログで述べた「特定同族会社への貸付」に当てはまる方が多いようです。
 特定事業用宅地等の特例に関するフローチャートはこちら


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