相続人による預金の使い込みについて

2018年1月12日 金曜日

後見人が付された被相続人と使途不明金について

本日のブログは、後見人が付された被相続人と使途不明金のケースについての記事になります。

今週、注目すべきニュースがありました。
平成30年1月11日 NHKニュースから
8年前に亡くなった女性の遺族が生前、成年後見人だった義理の母親に預金を繰り返し引き出されて使途不明となったのは、家庭裁判所の家事審判官などが後見人の監督義務を怠ったからだと訴えていた裁判で、京都地方裁判所は家事審判官の責任を認めて国におよそ1300万円の賠償を命じました。
(以下引用終わり)

このような裁判は、後見人の不祥事の多発化により増加しています。
女性の相続人としては使い込みをした後見人を訴えることを考えます。
しかし、女性の後見人は義理の母親だったようで、すでに亡くなっていたようです。
裁判所(京都家裁)が不法行為をしたとの裁判を、裁判所(京都地裁)に訴えるという笑えない話になっています(具体的には国が不法行為をしたということで国家賠償請求訴訟を提起します)。

実際に、被相続人に後見がついていたケースで、被後見人が亡くなった後、使途不明金の相談をいただくことが多いです。
多いのは、後見人につく前の使途不明金を取り戻したいというもの。
本人の財産管理が不適切であることから、後見人が付されるという事案が多いからです。
請求の可否を考えるときにネックになるのは、1.証拠関係が揃えられるか、2.消滅時効により権利が消滅しないかという点です。

後見人による使い込みのご相談はごく稀ですが、この裁判のように、ケースによっては裁判所の監督義務違反に対する返還請求を検討すべき事例もありそうです。


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2016年3月11日 金曜日

名義預金について(その預金は誰のものか?)

本日は東日本大震災発生から5年目の日となりました。震災により亡くなられた方のご冥福をお祈りし、全ての被災者の方にお見舞い申し上げます。

さて、これまで預金の関係では、以下のブログを書いていました。
相続人による預金の使い込みが疑われるケース
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/09/post-31-976013.html
相続人による預金の使い込みについて(調べかた)
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/09/post-32-984800.html

今回は、預金の使い込みとは趣が異なりますが、いわゆる名義預金について、相続の場面での扱いについて見てみます。
名義預金とは、預金契約の名義人と実質的な帰属者が異なる預金を言います。

中には、「えっ、預金の口座の所有者って口座名義人と違うの?」と思われる方もいるかと思います。
しかし、過去には名義預金の帰属が名義人ではなく、実際に金銭を拠出していたものであるとした裁判例があります(東京高裁平成21年4月16日 相続税更正処分取消請求事件判決)。

この論点が問題となる典型例は、相続税の申告納付後に国税庁から、他人の名義となっている預金が実は被相続人の相続財産ではないかという指摘がなされるケースです。
このようなケースは珍しいケースではなく、被相続人がそれなりの資産を築き、他の親族の名義で預金をしていることは往々に見られることです。
そして、名義人となっている他の親族に預金額相当の収入を得ていた事実が無いなどとして、国税から税務調査が入ることもあるようです。

上記判例がいうには、他人名義の預金が相続開始時に被相続人に帰属する財産(遺産)であるか否かは、
①当該財産またはその購入原資の出捐(エン)者が誰か、
②当該財産の管理及び運用の状況
③当該財産から生じる利益の帰属者は誰か、
④被相続人と当該財産の名義人並びに管理運用者との関係
⑤当該財産の名義人が名義を有することになった経緯

総合考慮して判断すると判示しています。

このような名義預金の存在が疑われる場合、相続人間で遺産の範囲として争われるケースもあります
その場合、まずは名義預金が被相続人に帰属する財産か否かを慎重に検討したうえで、遺産に含まれる(被相続人に帰属する)とするのであれば、遺産分割調停を起こすか、その前に遺産確認訴訟ないし共有持分権確認訴訟を提起する必要があります
これに対し、名義人からは贈与などの反論も考えられるところです。
そうすると特別受益の論点も検討する必要があります
このように名義預金の問題は遺産相続の場面においても、重大な問題として浮上することがあります


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2016年3月 9日 水曜日

遺言書の有効と無効の境界(その2)

前回のブログでは、遺言書の有効と無効の境界(その1)について記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/03/post-49-1268444.html

今回は、遺言書の有効と無効の限界(その2)として、遺言能力に関する紛争類型を見てみます。
遺言者は遺言をするときにおいて遺言能力を有していなければなりません民法963条)。
その他、15歳になると遺言書を作成することができます同961条)。
さらに、判断能力に関する条件として、成年被後見人については判断能力(事理弁識能力といいます)を回復した場合に限り、医師2名が立ち会い、その医師が判断能力に問題が無かったことを遺言書に記載し、署名捺印することを条件に遺言をすることができるとさだめられています同973条)。もっとも、実務では成年被後見人の方が作成し、医師が署名捺印をした遺言書を見たことはありません。

このように遺言作成時に遺言能力が備わっていること自筆証書遺言、公正証書遺言のいずれにも共通の要件です。
最近では、この遺言無能力を理由に遺言の効力が争われる例が増加しています。その多くは、認知症等の判断能力の低下により遺言の無効が争われるケースです。
これは介護保険法の導入に伴い、医療記録や介護記録など判断能力を証明する証拠資料が充実してきたことにも原因があると考えられます。

遺言無能力による遺言無効の訴えを提起する場合、遺言時における精神上の障害の内容・程度が大きな争点になります。
そこで、遺言無能力を裏付ける証拠として、具体的には以下の資料の収集を検討します。
①(医師が関与するもの) カルテ、知能テストの結果、医師の診断書、後見等申立事件の鑑定結果など
②(ケアマネ・ヘルパー・介護事業者が関与するもの) 看護記録、介護記録、介護認定調査票、サービス担当者会議議事録など
③(家族が関与するもの) 当時の日記や書類における本人の記載内容、通帳や取引履歴など財産管理状況に関する書類、室内や生活状況の写真など

これらの資料を多角的に検討分析し、遺言作成当時、精神上の障害の程度が著しいものであると主張していくのです。

厚生労働省によると、平成24年時点での認知症患者数の推計値は全国で462万人平成37年にはこれが700万人にも増加する見通しといわれています。
今後も、遺言無能力を理由として遺言無効を求める紛争は増えていくと思われます。


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2014年9月12日 金曜日

相続人による預金の使い込みについて(調べかた)

 前回は、相続人の預金の使い込みについて、パターン別に解説しました。
 http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/09/post-31-976013.html

 今回のブログでは、使い込みをどうやって調べるか、について説明します。
 調べた結果は、調停や裁判においては証拠にもなりますので、重要です。また、多額の引き出しや振り込みが発覚して遺産分割を有利に進めることができるケースも多くあります。
 まず、手元に通帳が残っている場合は、そこから振込送金や振込入金、引き出しや入金等の状況が分かります。通帳が手元になかったり、更に期間を広げて詳細を調べる場合には金融機関から取引履歴を取得することになります。
 その際、口座名義人と口座番号が分かればいいですが、口座番号がわからなくても、住所や生年月日の情報で預金の契約者を特定し、検索してもらえる場合があります。

 まず、被相続人が生前に取引していた預金の取引履歴については、金融機関に請求すれば開示してもらえます。これは、最高裁平成21年1月22日の判決以来、どの金融機関でも開示する対応になっています開示の期間は10年というところが多いです。ただ、取引が長期に及んでいたり、取引関係(例えば借入れがある場合)があるなど個別のケースでは、10年以上の取引履歴の開示をしてくれる場合もあります
 
 次に、被相続人が生前に解約していた預金の取引履歴については、金融機関に開示の請求ができるかについては見解が分かれています。現在最高裁で審理されている事件(東京高裁平成23年8月3日判決)があり、近く、判断が出ると思われますが、現時点では金融機関は個別の対応になるようです(要するにやってみないと分からない)。
 
 さらに、取引履歴を開示して、個別の取引について調べる必要がある場合(例えば振込先の口座情報など)については、金融機関に弁護士会照会で照会をかけるという方法もあります

 また、株や債券など証券取引については、証券会社に取引履歴の開示を請求すれば、過去の取引を開示してくれます。この場合も10年という扱いが多いようです。
 
 なお、ゆうちょ銀行では他の金融機関と違って特殊です。年月日を特定してその時点での通常貯金や定期預金の残高を教えてもらうことができます。また、振込依頼書などの写しが保管されており、それを開示してくれます。そうすると、手書きの文字の筆跡が分かり、誰がどこに振込の指示をしたかなどが分かる場合があります

 こうして取得した取引履歴を検討するわけですが、複数の口座をそれぞれ10年ないしそれ以上に遡って精査するというのは大変です。全部自分ではできないという方や、自分では履歴の見方が分からないというときは弁護士に相談いただければと思います。


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2014年9月 2日 火曜日

相続人による預金の使い込みが疑われるケース

 今回は、遺産分割に関して問題になる、相続人による預金の使い込みについて触れます。相続人による現預金の使い込み疑惑は、本当によく相談されることの多い問題です。
 例えば、ある相続人が被相続人の晩年に財産管理をしていて、他の相続人から預金の使い込みを疑われており、実際に預金の取引履歴を取得してみると、多額の金銭が引き出されていたというケースが典型です。
 それぞれの時系列と事情に応じて、請求の手段と対応を考える必要があります

1.被相続人死後の預金引き出し
 まず、被相続人死後の預金引き出しは、現実に管理していた者が引き出したことになります
 その場合、他の相続人は管理者に対して、使途を問い合わせて確認することになります。これに対して、引き出した預金が葬儀費用など合理的な用途に支払われた場合は、その分は使い込みではないことになります。
 そのような説明がなされなければ、他の相続人は管理をしていた者に対して、不当利得返還請求か不法行為に基づく損害賠償請求をすることになります。相続人が複数いる場合は、相続割合に応じて請求をすることになります。その場合、交渉から初め、それで返還されなければ、訴訟提起ということになります。
 もっとも、請求については、消滅時効がありますので注意しましょう。

2.被相続人の生前の預金引き出し
 被相続人の生前の預金引き出しは、管理者の反論の内容によっていくつかのパターンに分かれます。

  まず、預金が被相続人のために使われていた場合です。
   よくあるパターンとして、預金の使途を追及したところ、被相続人のために使ったという領収証が提出されるというケースがあります。この場合は、被相続人が管理者を通じて自己の財産を使ったということであり、使い込みにはなりません。

  次に、預金が被相続人の同意なく、管理者自身の利益のために使われた場合です。
   例えば、管理者が無断で被相続人の口座から自分の口座に移して使い込んだケースや、被相続人が認知症で同意の可否について判断できないケースもこれにあたるでしょう。この場合は、相続人は管理者に対して、不当利得返還請求不法行為に基づく損害賠償請求財産管理契約に基づく返還請求を行うことになります。
   これが典型的な使途不明金問題で、家庭裁判所の遺産分割調停でも付随問題として取り上げますが当事者間で使途などについて争いがある場合は、訴訟で決着するように言われます。この場合も請求権ですので、消滅時効に要注意です。

  さらに、その使途が被相続人の管理者に対する贈与であった、という場合です。
   この場合は、特別受益の成立を検討することになります。特別受益における生前贈与には「婚姻または養子縁組のための贈与」と「生計の資本としての贈与」があり、これらに該当する場合は、相続分の前渡しとなり、相続人がすでに取得したものとして差し引かれる処理がなされます。
   特別受益には消滅時効の問題はありません。従って、理論上は過去何年でも遡って追及することができます。

 いずれにしても重要なことは、これらの使途を裁判所で調べてもらおうと思って調停に臨んでも、裁判所は調査してくれません。他人の使い込みを疑う相続人が積極的に自ら調査して証拠固めを行う必要があります。そして、その作業は過去数年に及ぶことが多く、骨の折れる作業になります。
 また、請求の仕方についても、上記の分類に応じて有利な方法で行うことが必要です。


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