相続と不動産

2017年5月26日 金曜日

空き家の相続

今回のブログは空き家の相続と題して、空き家を相続するケース注意点について確認したいと思います。

今、日本全国で空き家が増えているのはご存知でしょうか。
人が居住せず、放置される空き家の増加に伴う倒壊、衛生上の危険を踏まえて、空き家対策法が平成27年5月に施行されたことも記憶に新しいです。

国土交通省の調査によれば、平成25年時点での全国の空き家の件数は約820万戸この10年間で160万戸以上増えています。このうち賃貸向け住宅は52%、半分強です。
https://www.mlit.go.jp/common/001107436.pdf
一方、東京では平成25年時点の空き家は約82万戸で、賃貸向け住宅が73%あることが特徴です(東京都都市整備局の調査)。
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_kcs/pdf/h27_05/shiryo_27_05_08.pdf


相続の場面でも、相続財産に空き家があってどの相続人も欲しいと言わない場合に、この空き家をどうするかで問題になることがあります。
以下に注意点を列挙します。
1.売却
買い手がつくような空き家であれば、売却してその代金を相続することが可能です。遺産分割協議で合意して、または遺産分割協議中に売却することで売却代金を分割するケース。
あるいは不動産の価格が合意できれば特定の相続人が相続して売却するケースもあります。その場合、相続人間で合意した価格より高く売れても安く売れても後で覆すことはできません

しかし、売り出しても買い手がつかないような空き家については対応に困ります
売出価格からだんだんと価格を下げて買い手が現れるのを待つこともあります。こちらから隣家や近隣の方に買取を打診するという対応もあり得ます。不動産は、実は近隣の方に買われているというのが多いのです。
また、最近は、高齢化と人口減少に伴い、各自治体で空き家バンクといって、空き家のリストを作成して移住者を募集しています。自治体によって違いますが、移住者には補助金が出ます。このような空き家バンクに登録してみるのも一つの手でしょう。空き家バンクでは、売買賃貸の形態があるようです。
一般社団法人 移住・交流推進機構のHP https://www.iju-join.jp/akiyabank/

2.贈与・寄付
それでも売れない場合、困ってしまいます。ここからがノウハウや知恵が必要となる段階です。空き家であっても不動産ですから、当然、固定資産税保守管理費用がかかります。そうすると低廉な価格でも、場合によっては無償でも譲渡したいというケースがあるでしょう。
そこで、自治体に寄付するということも選択肢としては有りうるのですが、自治体の方で利用する目的が無いと不動産の寄付を受け付けないことが多いです。
あとは、NPO法人一般社団法人一般財団法人など公営法人に対する寄付も考えられますので、寄付を受け付けている団体を調査することになります。ただし、寄付みなし譲渡所得が発生する可能性がありますので要注意です。

3.譲渡所得税の特例
また、空き家については譲渡所得税の特例があります。2016年4月1日から2019年12月31日までの間に相続人が売却した場合は、居住用財産の3000万円の特別控除の適用が受けられます。
要件は、①被相続人が1人で住んでいたこと(老人ホームに入居していた場合は不可)、②その家屋が1981年5月31日以前に建築されたこと③相続の時から譲渡の時まで、事業用、貸付用または居住用でないこと④譲渡対価が1億円以下であること⑤相続開始の時から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること、などです。

4.相続放棄の注意点
相続放棄すれば空き家を相続することはありません。従って、最終手段として相続放棄するということも考えられます。ただし、相続放棄は以下の点がネックです。
まず、相続放棄をするかどうかを判断する期間は3か月という制限があります。但し、考慮する期間(熟慮期間といいます)を伸長することができます。
次に、相続放棄をしても同順位ないし次順位の法定相続人が相続することになります。相続人が相続放棄をして誰も相続人がいなくなった場合は、最後の相続放棄をした相続人が注意義務を負います(民法940条)この義務から解放されるためには、相続財産管理人の選任を行うことになります(費用面等いろいろな問題があります)。
さらに、相続放棄は、プラスの財産も放棄することになりますので、プラスの財産が多い場合には選択しないでしょう。


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2016年3月25日 金曜日

行きすぎた相続税節税対策

今回はタワーマンションを利用した相続税節税についてのブログです。

ここ数年タワーマンションの建築に伴い、相続を控えた高齢の方がタワーマンションを購入して相続財産の評価額を圧縮し、相続開始後間もなく売却するということが相続税節税スキームとしてもてはやされています。

相続財産の評価については、相続税法22条により、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」とされます。
そして、不動産については、その時価の定義は、国税庁の定める財産評価基本通達により、「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいう」とされ、「その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」ととされます。

そこで、同通達によると、マンションなど区分所有権については、建物の専有部分の評価は固定資産評価額を基に決められます。
他方、土地は路線価により評価されますが、マンションの場合その敷地面積をマンション各戸の床面積の割合で割りますので、こま切れの土地の評価になります。
タワーマンションの場合は、階数が多い分戸数も多くなるため、各戸の土地の持分はさらにこま切れとなり、その評価額は通常のマンションより圧縮されます
そして、通常、タワーマンションは上層階の方が眺望や日照の面から高値で売買されますが、建物の相続税評価において高層階と低層階の違いはありませんので、例えば最上階で3億円の物件が相続税の評価では5000万円ということが起こりうるわけです。
これを賃貸に出していると、土地部分は貸家建付地の評価を受け建物部分は貸家評価を受けることから、さらなる圧縮が可能となります。

しかし、あからさまに相続税の節税対策として上記の「からくり」を利用したケースでは当局から否認される例もあります。
例えば、平成23年7月1日の国税不服審判所で否認されたケースがそうです。
この審判では、被相続人が一度もマンションを訪問していないこと相続人が相続開始の4か月後に媒介契約を締結して売り出していることなどを理由に相続税の負担を回避するためにマンションの購入がなされたことを認め、マンションの評価額をその取得価格である2億9300万円としました相続税申告額は5800万円とのことですので、大きな負担増です。
このケースでは被相続人がマンションを使用収益していれば異なる判断が出された可能性もそれなりにあったと思われます。

もちろん、国税庁も何らの対応をせずに手をこまねいているわけではありません。
以下のニュースのとおり、今後、通達の改正などがなされる可能性は高いでしょう。
「国税庁や、マンションの財産評価に関係する総務省は、物件の実勢価格に合わせて例えば20階は1階より1割増し30階は2割増しという形で評価額が上がるよう補正する案などを検討している。税負担は高層階ほど重くなり、低層階では軽くなることも想定される。国税庁の松山清人・資産評価企画官は『不公平にならないような改正を検討したい』と話す。」
(以上、平成28年2月16日付朝日新聞から引用)


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2015年10月 5日 月曜日

未登記不動産がある場合のリスク

今回は資産のなかに未登記・相続登記未了の不動産がある場合のリスクについて述べたいと思います。

これまで不動産に関しては、以下の記事を書いてきました。
なぜ不動産で揉めるのか
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/05/1-1-852449.html
不動産の分け方
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/05/post-8-869295.html
不動産の評価
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/05/post-8-869295.html
相続後の賃料収入の分配
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2015/09/post-36-1203659.html

相続のご相談の中で、遺産に未登記の建物があるとか、前回の相続で相続登記をしていなかったケースというのが結構あります。
例えば、死んだ父が建てた建物が表示登記をしていなかったとか、祖父の相続の時に相続登記をせずに土地が未だに祖父名義のままとなっているとか、増改築の登記がされていなくて床面積や構造が登記と実態で合わないなどのケースです。

このような未登記建物や相続登記未了の不動産があると、どのようなリスクがあるでしょうか。

まず未登記というのは、権利関係が登記によって明確に表示されていないということです。そこで、遺産分割する場合に予想もしていない相続人と協議する必要が生じる場合があります
例えば、先代の祖父の相続の際の相続登記が未了となっている場合は、祖父の遺産分割からやらなければなりません。そうすると、戸籍で相続人を調査して何人、十何人にも及ぶ相続人に連絡しなければならないなど、とても大変なことがあります。

次に、未登記の不動産はそのままでは買い手はつきません。従って、未登記の建物を処分しようとする場合には登記する必要があります。
しかし、登記するためには所有権があるという証拠資料を法務局に提出しなければいけません。これが結構厄介です。固定資産税を支払った証拠としての領収証や、確認申請の資料工事請負業者の引渡完了証などです。築年数の経過した古い建物になるとこれら資料がない場合があり、最悪の場合、登記出来ないといったケースがあります。

さらに極端なケースでは不動産の所有権自体を争われることがあります。所有権など不動産に関する物権は登記の有無で判断されますので、登記がないと第三者が権利を主張してきた場合に、こちら側で権利があると反論できない可能性もあります。

上記のようなリスクを考えると、相続が開始する前でも未登記、相続登記未了の状態は出来るだけ解消しておくべきです。また相続が始まったけど、建物の登記がされていなかったとか、前回の相続登記がされてなくて困っているという方は是非ご相談ください。

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2015年9月18日 金曜日

相続後の賃料収入の分配

 今回は「相続後の賃料収入の分配について」のブログです。
 
 前々回は、預金が相続分に応じて当然分割されることを説明しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2015/09/post-35-1197008.html
 前回は、株式や投資信託などは相続分に応じて当然に分割するものとはならないと説明しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2015/09/post-2-1187086.html

 今回は、応用として、遺産に賃貸不動産がある場合、その不動産から生じる賃料収入は相続人が相続分に応じて請求できるかを見てみたいと思います。
 まず、生前の賃料収入死後の賃料収入について分けて考えてみましょう。
 生前に生じていた賃料収入は、現金で存在していれば金銭の遺産分割となり、当然に分割されません。他方、銀行預金にプールされている賃料はすでに預金債権になっていますから、当然分割されます。
 
 死後の賃料収入はどうでしょうか(前提ですが、賃貸人の死後にも賃料収入は発生します。)。 
 この問題については、平成17年9月8日の最高裁判決が結論を出しています
 すなわち、相続開始から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産から生じた賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する、としています。
 
 そうすると、相続人の誰かが遺産分割によって当該賃貸不動産を単独取得した場合、遺産分割は相続の開始に遡って効力を生じますので、各相続人が既に得た賃料は精算する必要があるのでしょうか
 この点についても、上記の最高裁判例は回答しています。死後の賃料は遺産ではない、別個の財産であるというのがポイントです。つまり、精算する必要はありません
 従って、遺産分割が未了の間は各相続人は相続分に従って、賃料の一部を取得できます。遺産分割が長引けば長引くほど賃料の受け取りが続くことになります
 かといって、相続人の一人がテナントや入居者に自己の相続分の賃料を請求しても、払ってくれません。通常、相続人の誰かか管理会社が従前と同じ方法で賃料の支払いを受けていますので、実際にはそこから相続人が自己の相続分に応じて支払を受けることになります。この点は、事実上賃貸不動産を管理している相続人には結構な負担になります。
 遺産に賃貸不動産があって、話がまとまらず困っているという方は是非ご相談ください。


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2014年5月26日 月曜日

相続と不動産(不動産の評価)

 前回のブログでは、不動産の分割方法についてお話ししました。今回は、遺産分割の実務では不動産をどう評価するのか、についてお話したいと思います。

 前回、不動産をどのように分けるのかに関連して、遺産分割協議および調停での話合が合意を形成されるために行われることについても記載しました。これは、不動産の評価方法についても同様です。
 通常、不動産の相対の取引では、不動産価格にはまず売出価格があり、そこから買主との間で価格交渉が始まります。売出価格は通常の宅地であれば、近隣の取引事例の坪単価を参考にすることが多いでしょう。また、公示地価基準値標準価格があればそれを参考にする場合もあります。しかし、当該宅地が基準値から離れていて参考にならない場合には、路線価から8割で割り戻して算定することもあります。こうして、売買が成立すると、その価格は実勢価格とか時価といわれます。
 これら宅地の価格の算定についての考え方は、遺産分割における不動産の評価とも似ています。

 一方、宅地上の建物については、遺産分割では固定資産評価額を用いることが多いです(特に調停ではそうです)。もっとも、建物が商業ビルや賃貸用アパートやマンションなどの収益不動産の場合については、収益還元法のようなやり方で年間の賃料収入を利回りで割り戻すという方法もとられます。これについても、近隣の取引事例から参考にされることが多いです。

 遺産分割の調停では、不動産の評価方法についての議論は、何を目指しているのかというと、当事者が合意できる価格です。この意味で売買が成立するときの実勢価格、時価と類似点があります。実際には、相続人間では感情的な対立も合わさって合意形成が難しくなることがありますが、上記の考え方を忘れず、冷静に対処すべきです。
 不動産の評価について見てきたとおり、高く評価したいと考える相続人は、そのような高い評価を裏付ける資料(例えば、不動産会社の査定や近隣の取引事例の資料)を収集して、相手方に提出することになります。他方、評価を抑えたい相続人は、評価を抑える資料を集めることになります(例えば、近隣の取引事例や物件を保有することに伴うコストとしての公祖公課や修繕費などの資料など)。
 これらの協議を経てもなお相続人間で合意できなければ、調停では、裁判所が選任する鑑定人が原価法、取引事例比較法、収益還元法やこれらの3種を組み合わせて鑑定することになります。

 なお、不動産の価格もその時々の景気や政策によって、上下します。そこで、どの時点で不動産を評価するのかという点も重要になります。遺産分割の財産の評価時点は、基本的に分ける時(遺産分割時)を基準としています。ただし、特別受益や寄与分の算定について死亡時(相続開始時)が基準となっているので、注意が必要です。もっとも、この点も当事者が合意すれば、どちらかに合わせる(分割時が多いです)ということで調整が図られています。

 経験の豊富な弁護士は、これらを踏まえた上で不動産の遺産分割にあたっています。
 よく聞かれることで、依頼者の方が弁護士に依頼する場合には、どのような視点で選べばよいかという質問があります。以下のことを念頭に置けばほとんどハズレないと思います。
 第1に弁護士との相性がよいか(コミュニケーションをとっていく上でストレスがないか)、第2に弁護士のおおまかな方針に賛同できるか第3に弁護士の同種案件の処理の経験とノウハウが豊富であるか、を基準として選ばれればよいでしょう。


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