事務所ブログ

2016年3月25日 金曜日

行きすぎた相続税節税対策

今回はタワーマンションを利用した相続税節税についてのブログです。

ここ数年タワーマンションの建築に伴い、相続を控えた高齢の方がタワーマンションを購入して相続財産の評価額を圧縮し、相続開始後間もなく売却するということが相続税節税スキームとしてもてはやされています。

相続財産の評価については、相続税法22条により、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」とされます。
そして、不動産については、その時価の定義は、国税庁の定める財産評価基本通達により、「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいう」とされ、「その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」ととされます。

そこで、同通達によると、マンションなど区分所有権については、建物の専有部分の評価は固定資産評価額を基に決められます。
他方、土地は路線価により評価されますが、マンションの場合その敷地面積をマンション各戸の床面積の割合で割りますので、こま切れの土地の評価になります。
タワーマンションの場合は、階数が多い分戸数も多くなるため、各戸の土地の持分はさらにこま切れとなり、その評価額は通常のマンションより圧縮されます
そして、通常、タワーマンションは上層階の方が眺望や日照の面から高値で売買されますが、建物の相続税評価において高層階と低層階の違いはありませんので、例えば最上階で3億円の物件が相続税の評価では5000万円ということが起こりうるわけです。
これを賃貸に出していると、土地部分は貸家建付地の評価を受け建物部分は貸家評価を受けることから、さらなる圧縮が可能となります。

しかし、あからさまに相続税の節税対策として上記の「からくり」を利用したケースでは当局から否認される例もあります。
例えば、平成23年7月1日の国税不服審判所で否認されたケースがそうです。
この審判では、被相続人が一度もマンションを訪問していないこと相続人が相続開始の4か月後に媒介契約を締結して売り出していることなどを理由に相続税の負担を回避するためにマンションの購入がなされたことを認め、マンションの評価額をその取得価格である2億9300万円としました相続税申告額は5800万円とのことですので、大きな負担増です。
このケースでは被相続人がマンションを使用収益していれば異なる判断が出された可能性もそれなりにあったと思われます。

もちろん、国税庁も何らの対応をせずに手をこまねいているわけではありません。
以下のニュースのとおり、今後、通達の改正などがなされる可能性は高いでしょう。
「国税庁や、マンションの財産評価に関係する総務省は、物件の実勢価格に合わせて例えば20階は1階より1割増し30階は2割増しという形で評価額が上がるよう補正する案などを検討している。税負担は高層階ほど重くなり、低層階では軽くなることも想定される。国税庁の松山清人・資産評価企画官は『不公平にならないような改正を検討したい』と話す。」
(以上、平成28年2月16日付朝日新聞から引用)


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詳細につきましては、松井・森岡法律事務所まで(担当 松井)
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2016年3月24日 木曜日

セミナーのお知らせ

今回はセミナーのお知らせです。

杉並区の地域包括支援センター主催の下記セミナーで講師を務めます。
当職が成年後見制度の活用と遺言相続の関連知識について1時間30分ほどお話をします。
具体的な問題意識がある方がお聞きにいらっしゃると思います。
できれば話は早めに切り上げて質問の時間も設ける予定です。

興味のある方はチラシの≪申し込み先≫までご連絡ください。


日時:平成28年3月29日(火) 午後1時30分~3時
場所:杉並区医師会館 3階講堂 (阿佐谷南3-48-8)
テーマ:成年後見制度の活用~遺言・相続の知識~
対象者:杉並区在住・在勤の方



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2016年3月11日 金曜日

名義預金について(その預金は誰のものか?)

本日は東日本大震災発生から5年目の日となりました。震災により亡くなられた方のご冥福をお祈りし、全ての被災者の方にお見舞い申し上げます。

さて、これまで預金の関係では、以下のブログを書いていました。
相続人による預金の使い込みが疑われるケース
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/09/post-31-976013.html
相続人による預金の使い込みについて(調べかた)
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/09/post-32-984800.html

今回は、預金の使い込みとは趣が異なりますが、いわゆる名義預金について、相続の場面での扱いについて見てみます。
名義預金とは、預金契約の名義人と実質的な帰属者が異なる預金を言います。

中には、「えっ、預金の口座の所有者って口座名義人と違うの?」と思われる方もいるかと思います。
しかし、過去には名義預金の帰属が名義人ではなく、実際に金銭を拠出していたものであるとした裁判例があります(東京高裁平成21年4月16日 相続税更正処分取消請求事件判決)。

この論点が問題となる典型例は、相続税の申告納付後に国税庁から、他人の名義となっている預金が実は被相続人の相続財産ではないかという指摘がなされるケースです。
このようなケースは珍しいケースではなく、被相続人がそれなりの資産を築き、他の親族の名義で預金をしていることは往々に見られることです。
そして、名義人となっている他の親族に預金額相当の収入を得ていた事実が無いなどとして、国税から税務調査が入ることもあるようです。

上記判例がいうには、他人名義の預金が相続開始時に被相続人に帰属する財産(遺産)であるか否かは、
①当該財産またはその購入原資の出捐(エン)者が誰か、
②当該財産の管理及び運用の状況
③当該財産から生じる利益の帰属者は誰か、
④被相続人と当該財産の名義人並びに管理運用者との関係
⑤当該財産の名義人が名義を有することになった経緯

総合考慮して判断すると判示しています。

このような名義預金の存在が疑われる場合、相続人間で遺産の範囲として争われるケースもあります
その場合、まずは名義預金が被相続人に帰属する財産か否かを慎重に検討したうえで、遺産に含まれる(被相続人に帰属する)とするのであれば、遺産分割調停を起こすか、その前に遺産確認訴訟ないし共有持分権確認訴訟を提起する必要があります
これに対し、名義人からは贈与などの反論も考えられるところです。
そうすると特別受益の論点も検討する必要があります
このように名義預金の問題は遺産相続の場面においても、重大な問題として浮上することがあります


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2016年3月 9日 水曜日

遺言書の有効と無効の境界(その2)

前回のブログでは、遺言書の有効と無効の境界(その1)について記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/03/post-49-1268444.html

今回は、遺言書の有効と無効の限界(その2)として、遺言能力に関する紛争類型を見てみます。
遺言者は遺言をするときにおいて遺言能力を有していなければなりません民法963条)。
その他、15歳になると遺言書を作成することができます同961条)。
さらに、判断能力に関する条件として、成年被後見人については判断能力(事理弁識能力といいます)を回復した場合に限り、医師2名が立ち会い、その医師が判断能力に問題が無かったことを遺言書に記載し、署名捺印することを条件に遺言をすることができるとさだめられています同973条)。もっとも、実務では成年被後見人の方が作成し、医師が署名捺印をした遺言書を見たことはありません。

このように遺言作成時に遺言能力が備わっていること自筆証書遺言、公正証書遺言のいずれにも共通の要件です。
最近では、この遺言無能力を理由に遺言の効力が争われる例が増加しています。その多くは、認知症等の判断能力の低下により遺言の無効が争われるケースです。
これは介護保険法の導入に伴い、医療記録や介護記録など判断能力を証明する証拠資料が充実してきたことにも原因があると考えられます。

遺言無能力による遺言無効の訴えを提起する場合、遺言時における精神上の障害の内容・程度が大きな争点になります。
そこで、遺言無能力を裏付ける証拠として、具体的には以下の資料の収集を検討します。
①(医師が関与するもの) カルテ、知能テストの結果、医師の診断書、後見等申立事件の鑑定結果など
②(ケアマネ・ヘルパー・介護事業者が関与するもの) 看護記録、介護記録、介護認定調査票、サービス担当者会議議事録など
③(家族が関与するもの) 当時の日記や書類における本人の記載内容、通帳や取引履歴など財産管理状況に関する書類、室内や生活状況の写真など

これらの資料を多角的に検討分析し、遺言作成当時、精神上の障害の程度が著しいものであると主張していくのです。

厚生労働省によると、平成24年時点での認知症患者数の推計値は全国で462万人平成37年にはこれが700万人にも増加する見通しといわれています。
今後も、遺言無能力を理由として遺言無効を求める紛争は増えていくと思われます。


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2016年3月 3日 木曜日

遺言書の有効と無効の境界(その1)

前回のブログでは、遺言書の効力を争う方法を書きました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/02/post-48-1267235.html

今回のブログでは、具体的にどのあたりが自筆証書遺言の有効無効の分かれ目となるかを見ていきます。
仮に遺言書の効力が問題になった場合は、これらの事例を参考に分析、検討していくことになります。

1.自筆遺言証書における「自書」性
遺言者が書いたが、他人により添え手がなされていたケース
  →無効 (最高裁昭和62年10月8日判決)
土地を特定するため遺言書に図面を添付していたケース
 →有効 (札幌高裁平成14年4月26日判決)
カーボン複写で遺言書を作成したケース
 →有効 (最高裁平成5年10月19日判決)

2.自筆証書遺言における署名押印
署名押印の押印が指印でなされたケース
 →有効 (最高裁平成元年2月16日判決)
封筒には押印があり、遺言書本体に署名はあるが押印が無い
 →有効
(最高裁平成6年6月24日判決)
封筒には署名押印があるが、遺言書本体には署名押印が無い
 →無効 
(東京高裁平成18年10月25日判決)

3.自筆証書遺言における「日付」
作成日を「吉日」としたケース
 →無効 (最高裁昭和54年5月31日判決)
昭和48年を昭和28年と明らかな誤記がなされたケース
 →有効 (最高裁昭和52年11月21日判決)
バックデートによる日付
 →無効 (東京高裁平成5年3月23日判決)

4.自筆遺言証書における「加除変更」
「ユ」→「遺言」など明らかな誤記の訂正について署名捺印が無かったケース
 →有効 (最高裁昭和56年12月18日判決)
抹消部分に押印はあったが署名が無かったケース
 →有効 (東京高裁昭和55年11月27日判決)
赤いボールペンで遺言書全体に斜線を引いたケース
 →遺言書を破棄したものとして無効 (最高裁平成27年11月20日判決)

上記の事例は、いずれも高裁や最高裁まで裁判が続いています
遺言書が有効か無効で結論が大きく違いますから、それだけ争いが深刻になるということでしょう。
いずれも当該事案に対する判断なので、事実関係が微妙に違うと結論が変わりうるので注意が必要です。
また自筆証書遺言は検認が必要ですが、開封されていたかどうかでも結論に影響します
いずれにせよ、有効性に疑義の無い遺言書をしっかり作成しておくにこしたことはないでしょう。


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