事務所ブログ

2016年5月19日 木曜日

相続人の地位を争う(婚姻無効・養子縁組無効)

これまでのブログでは、相続人の範囲・地位に関して問題となる例を述べてきました。
前回は相続人の地位を争う場合として、「子」の地位を争うケースを述べました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/04/post-54-1288121.html
前々回は相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議の注意点を記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/04/post-53-1287711.html

今回のブログは相続人の地位を争う場合のその2として、婚姻が無効であるとか養子縁組が無効であると考えられるケースについてどうすればよいかについて記載します。
例えば、被相続人が晩年に結婚・養子縁組する意思があるかどうかきわめて怪しい状態であるのに、婚姻届・縁組届に署名捺印がなされて役所に提出されたケースが典型です。

いずれにせよ、相続のケースでいうと、相続人とはいえ他人の婚姻や養子縁組について無効を主張できるのかという問題があります。
この点、婚姻が無効であることにつき、その利益がある限り、第三者も他人の婚姻が無効である旨の訴えを提起することができるとされています(最高裁昭和34年7月3日判決)。
養子縁組についても、自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者であれば養子縁組無効の訴えを提起できます(最高裁昭和63年3月1日判決)。

したがって、相続人としては被相続人の婚姻・養子縁組無効の訴えを提起できることになります。
ただし、これはそもそも訴えることができるかどうかの入り口の話です(訴えの利益とか原告適格などの問題です)。
本案で勝つためには、実質的な婚姻意思・縁組意思がなかったとか、届出が偽造であるといった事情について積極的に主張していく必要があります。

事実は小説より奇なりといいますが、世の中には、姓を変えて借金をするために養子縁組がされたり、面識もない人との間で養子縁組がなされていたりする事例があります。このような場合は、実質的な縁組意思、すなわち「真に社会通念上親子であると認められる関係の設定を欲する意志」がないとして縁組が無効とされることになります。
また、認知症であった被相続人が行った養子縁組が無効であるとして争われるケースも多く、判例もいくつか出ています。
遺言書の有効と無効の境界(その2)
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/03/2-1-1271023.html
こちらのブログで述べたとおり、遺言無能力を理由に遺言無効を求める場合と証拠資料は重複することが多いでしょう。しかし、遺言能力と縁組意思の内容はレベルが違いますので注意が必要です。遺言能力は財産処分に関するものであり、縁組意思は身分関係の設定に関するものですので、前者のほうが上位の水準を求められているようです(広島高裁平成25年5月9日判決、東京高裁平成25年9月18日判決等参照)。


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2016年4月25日 月曜日

相続人の地位を争う場合

前回は相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議の注意点を記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/04/post-53-1287711.html

今回のブログは相続人の地位を争う場合にどうするかについて記載します。

まず、相続人であるかどうかは戸籍謄本で確認します。
相続人の地位を争うというのは、例えば、以下のケースが考えられます。
 ・相続人であると主張する子が被相続人の実の子ではない
 ・被相続人の生前の結婚が無効であるため、配偶者は相続人ではない
 ・被相続人は養子縁組をしていたが、その縁組が無効であるため、養子に相続権がない
などとして、子・配偶者・養子として戸籍上は相続権があるが、その親族関係が法的には否定されるべきものであるので、その結果相続人の地位を失うことを主張したいというケースです。

まず、最初の子のケースです。
昔は、子の無い夫婦が他人の子供を実子として届け出て養育するケースなど、他人の子を実の子として虚偽の出生届を役所に提出することがありました
こういうケースを「藁の上からの養子」といいます。

戸籍上「子」となっている相続人の相続人の地位を争う場合の手段としては、親子関係不存在確認の訴えが一般的です。
これは民法上の規定はありませんが、過去の最高裁の判例において認められた訴えの類型です。
最近のDNA鑑定技術の向上によって、親子であるか否かが科学的に高度な正確性をもって判定できるようになったことから相続の場面においても利用されるようになっています。

しかし、相続が発生したあとで、それまで長年にわたって「子」として養育されてきた「相続人」が「子」であることを否定されるとによって被る精神的打撃、社会的不利益は極めて大きいものがあります。
そこで最高裁判例(最判平18.7.7)は、親子関係がDNA鑑定等により存在しないことが明白となっても、以下の事情を考慮して親子不存在確認請求が権利濫用として認められない場合があることを明言しています。
 ① 実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ
 ② 判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより被告及びその関係者の受ける精神的苦痛、経済的不利益
 ③ 原告が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機、目的
 ④ 実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に原告以外に著しい不利益を受ける者の有無
 ⑤ 諸般の事情


これまでの親子関係不存在確認請求は、上記の判断基準に従って権利濫用として認められない場合が多くありました。
しかし、名古屋高判平20.12.25のケースでは、権利濫用にはあたらないとして親子不存在確認請求を認容する判断を下しました最高裁においても上告棄却、上告受理申立は不受理として確定)。
このケースが他のケースと異なるのは、被告本人が親子関係の不存在を知っていたこと被告が戸籍上の親から生前に経済的な支援を受けていたこと戸籍上の親の遺産分割手続が未了であったこと(遺産分割を覆す必要が無く法的安定性を害さないこと)、などです。
事実認定の勝負の面もありますが、親子関係不存在確認の訴えの提起の際に参考にすべき事例といえます。

なお、昨年メディアで大きく取り上げられた喜多嶋舞と大沢樹生の間の裁判も東京家裁において争われた親子関係不存在確認請求訴訟でした。この事件では、判決により長男と父との間の親子関係が否定されました。
ただし、このケースは相続ではありません。「親子」の当事者が生存しているケースでの親子関係の存否が争われたものです。従って、上記の権利濫用の主張がなされるケースとは異なりますのでご注意ください

次回は、離婚無効・養子縁組無効などについて見てみたいと思います。


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2016年4月20日 水曜日

相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議の注意点

今回のブログは、相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議の注意点です。

遺産分割の話し合いは、遺言書が無い場合、法定相続人が集まって、民法で決められた法定相続分を基準に協議を行うことになります。

例として、父、母、子の家族のケースで、父が亡くなった場合を想定します。被相続人(父)に相続人として配偶者(母)と子どもがいる場合、その法定相続分は各2分の1です。

しかし、子どもが未成年(20歳未満)である場合は注意が必要です。
一般に子どもが未成年の場合はその親が法定代理人となります。そして、親が子どもの法定代理人として子を代理して遺産分割手続に参加すると、親も相続人であると親が多く取得すると子どもが不利益になるという事態になります。これを利益相反関係といいます。

そこで、親は子供のために家庭裁判所に対して特別代理人(親権者にかわって未成年者を代理する人)の選任を申し立て、その特別代理人が親との間で遺産分割協議を行う必要があります(民法826条)
特別代理人には利益相反の立場に立たない他の親族弁護士等の専門職が選任されることになります。
特別代理人選任の手続を行わずに遺産分割手続を行っても、無効(無権代理人として効果不帰属)となります。

上記の例で、子が母の成年後見人となっているケースでも同様の配慮が必要です。
通常は、家庭裁判所で選任された成年後見人は、被後見人を代理して遺産分割に参加することになります。

しかし、成年後見人である子も相続人である場合は、子と被後見人の母の利益相反関係が生じます
ここでも家庭裁判所に特別代理人を選任してもらい、その特別代理人が遺産分割協議を行うことになります(民法860条)。ただし、後見監督人がいる場合は、後見監督人が被後見人を代理するので特別代理人の選任は不要です(民法860条但し書き、民法851条4号)。

保佐人補助人が付いている場合も、成年後見人と同様です(民法876条の3第2項、同876条の8第2項)。


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2016年3月25日 金曜日

行きすぎた相続税節税対策

今回はタワーマンションを利用した相続税節税についてのブログです。

ここ数年タワーマンションの建築に伴い、相続を控えた高齢の方がタワーマンションを購入して相続財産の評価額を圧縮し、相続開始後間もなく売却するということが相続税節税スキームとしてもてはやされています。

相続財産の評価については、相続税法22条により、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」とされます。
そして、不動産については、その時価の定義は、国税庁の定める財産評価基本通達により、「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいう」とされ、「その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」ととされます。

そこで、同通達によると、マンションなど区分所有権については、建物の専有部分の評価は固定資産評価額を基に決められます。
他方、土地は路線価により評価されますが、マンションの場合その敷地面積をマンション各戸の床面積の割合で割りますので、こま切れの土地の評価になります。
タワーマンションの場合は、階数が多い分戸数も多くなるため、各戸の土地の持分はさらにこま切れとなり、その評価額は通常のマンションより圧縮されます
そして、通常、タワーマンションは上層階の方が眺望や日照の面から高値で売買されますが、建物の相続税評価において高層階と低層階の違いはありませんので、例えば最上階で3億円の物件が相続税の評価では5000万円ということが起こりうるわけです。
これを賃貸に出していると、土地部分は貸家建付地の評価を受け建物部分は貸家評価を受けることから、さらなる圧縮が可能となります。

しかし、あからさまに相続税の節税対策として上記の「からくり」を利用したケースでは当局から否認される例もあります。
例えば、平成23年7月1日の国税不服審判所で否認されたケースがそうです。
この審判では、被相続人が一度もマンションを訪問していないこと相続人が相続開始の4か月後に媒介契約を締結して売り出していることなどを理由に相続税の負担を回避するためにマンションの購入がなされたことを認め、マンションの評価額をその取得価格である2億9300万円としました相続税申告額は5800万円とのことですので、大きな負担増です。
このケースでは被相続人がマンションを使用収益していれば異なる判断が出された可能性もそれなりにあったと思われます。

もちろん、国税庁も何らの対応をせずに手をこまねいているわけではありません。
以下のニュースのとおり、今後、通達の改正などがなされる可能性は高いでしょう。
「国税庁や、マンションの財産評価に関係する総務省は、物件の実勢価格に合わせて例えば20階は1階より1割増し30階は2割増しという形で評価額が上がるよう補正する案などを検討している。税負担は高層階ほど重くなり、低層階では軽くなることも想定される。国税庁の松山清人・資産評価企画官は『不公平にならないような改正を検討したい』と話す。」
(以上、平成28年2月16日付朝日新聞から引用)


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2016年3月24日 木曜日

セミナーのお知らせ

今回はセミナーのお知らせです。

杉並区の地域包括支援センター主催の下記セミナーで講師を務めます。
当職が成年後見制度の活用と遺言相続の関連知識について1時間30分ほどお話をします。
具体的な問題意識がある方がお聞きにいらっしゃると思います。
できれば話は早めに切り上げて質問の時間も設ける予定です。

興味のある方はチラシの≪申し込み先≫までご連絡ください。


日時:平成28年3月29日(火) 午後1時30分~3時
場所:杉並区医師会館 3階講堂 (阿佐谷南3-48-8)
テーマ:成年後見制度の活用~遺言・相続の知識~
対象者:杉並区在住・在勤の方



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「費用はどれくらいかかるの?」「期間はどのくらい?」

など、相続に関する疑問や質問にお答えしています。
もちろん、無理に依頼を勧める事はありません。

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