事務所ブログ

2016年12月29日 木曜日

事業承継税制について

今回は、経営承継円滑化法における中小企業の事業承継の支援施策のうち、事業承継税制についてのブログになります。

これまで、事業承継については、以下のブログを書いてきました。
事業承継と遺留分対策について
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/08/post-56-1301665.html
経営承継円滑化法の手続と問題点について
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/10/post-61-1339795.html

事業を承継する方にとっては、株式等の相続によて企業を承継したものの、相続税の負担が過大となると、事業の継続自体が危ぶまれ、ひいては従業員の雇用自体も失われる結果となります。
今回お話しする事業承継税制は、後継者が、経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式等を現経営者から相続または贈与により取得した場合において、相続税・贈与税の納税が猶予される特例制度のことです。
遺留分の民法特例よりは利用されるケースが多いようで、平成20年10月から平成28年3月までの利用実績が、相続894贈与626となっています(中小企業庁発表)。
後継者が死亡したときや、後継者が次の後継者(3代目)に贈与したときには、相続税や贈与税が免除されることもあり、それだけメリットがあるということでしょう。

<相続税の納税猶予制度>
後継者が納付すべき相続税のうち、相続により取得した非上場株式等に係る課税価額の80%に対応する額が納税猶予されます。
<贈与税の納税猶予制度>
後継者が納付すべき贈与税のうち、贈与により取得した非上場株式等に係る課税価額の全額に対応する額が納税猶予されます。

いずれも相続・贈与前から後継者が既に保有していた議決権株式等を含め、発行済み議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分に限られます

これらの適用を受けるには、相続税・贈与税の申告期限から5年間は、以下の要件を満たして事業継続を行うことが必要です。
①雇用の8割以上を5年間平均で維持(毎年維持から緩和されています)。
②後継者(親族以外にも拡充されています)が代表を継続
(贈与税の場合)先代の経営者が代表者を退任(有給の役員としては残留)
④後継者が対象株式を継続して保有
⑤上場会社、資産管理会社、風俗業を行う会社ではないこと

以上の特例を受けるためには、経済産業大臣の認定相続税または贈与税の申告期限までの申請納税猶予から5年間継続届出書を税務署に提出することが必要です。
事業承継税制を含めたトータルの事業承継のお悩みについても、お気軽にお問い合わせください。


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詳細につきましては、松井・森岡法律事務所まで(担当 松井)
電話 03-3261-7125
FAX 03-3261-7126

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2016年12月20日 火曜日

預貯金も遺産分割の対象となります(最高裁大法廷決定)

今回のブログは、ここ数年の相続分野ではもっともインパクトの大きい最高裁判例、しかも従前の判例を変更する大法廷決定について触れてみたいと思います。
これまでの関連のブログはこちらです。
遺産分割における預金と現金の取扱いの違い
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2015/09/post-35-1197008.html
各種金融商品の相続における取り扱いについて
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2015/09/post-2-1187086.html


(日本経済新聞H28.12.20朝刊)

報道でも触れられているとおり、最高裁は、これまでの判例を変更し、「普通預金債権、通常貯金債権、定期預金債権は相続開始と同時に当前に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解する」と判断しました。
判決文は裁判所のHPで公開されています(こちらです)。最高裁の各裁判官が補足意見喧々諤々の議論をしており、興味深いです。

これまでは預貯金は可分債権であるから、相続開始により当然分割されるという理屈のもと、例外的に当事者全員の合意がある場合だけ遺産分割の対象となるとされていました。
しかし、遺産分割調停においては、当職の経験ではほぼすべての調停で預貯金を遺産分割の対象とする旨の合意をしてきました。
また、家庭裁判所預貯金も含めた遺産分割調停を行うことに合意をするよう促してきました
ですから、預貯金が相続人に相続割合に応じて当然分割されるという原則が機能する場面はこれまでも多かったわけではありません。

しかし、主たる遺産が預貯金のみであり、被相続人の生前に生前贈与があって特別受益の成否が争われたり寄与分の成否が争われたりする場合には、預金債権が当然分割されて、各相続人が請求できるとなると、そもそも遺産分割調停で分けるべき遺産が無くなってしまい、特別受益や寄与分を争うことができなくなります。
それがまさに最高裁判例の事案でした

最高裁判例の変更に伴い、今後の影響については、以下のようなことが考えられます。
相続人間の対立が深刻な場合には、預貯金のみ一部分割を行うという合意ができない場合があります。そうすると、預貯金を含めた遺産全体について遺産分割を行う必要があります
金融機関も今回の最高裁判例に従い、預貯金は相続人全員の遺産分割協議書を持ってこないと引き出せませんという従来からの処理を徹底させるでしょう。

そうすると、遺産分割の解決までに長期化する場合には相続開始後に必ず必要となる葬儀費用や埋葬費用の支出、あるいは相続税の納税資金などについて、被相続人の預金から支出できないケースが多くなるでしょう。
これは、相続人の一部に資金の余力がない場合には深刻な影響が生じる可能性があります。

そこで、被相続人の生前からの準備として、以下のことが考えられます。
①相続開始後の支出用にまとまった現金を残しておく。
②遺言書を作成して遺言執行というかたちで預貯金の引き出しを可能とする。
遺言代用信託として、相続開始後の費用にあてるための預金を信託銀行においておく。
家族信託を設定して、例えば不動産の賃料収入を受益者である相続人が受け取るようにしておく。
生命保険契約を締結して、保険金受取人がその保険金から必要な支出を行う。


今後も、預貯金と相続についての動きは注視していく必要があります。

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2016年11月30日 水曜日

セミナーのお知らせ

今回はセミナーのお知らせです。

大田区社会福祉協議会主催の下記セミナーで講師を務めます。
相続分野に限らず、弁護士活用のイロハについてお話しする予定です
当職がセミナーでお話をしたあと、法律相談の時間もあるようです。
お近くでお時間の許す方はお越しいただければと思います。

日時:平成28年12月5日(月) 午後1時~3時
場所:大田区 本羽田プラムハイツ「こぶしの家」
テーマ:知って得する弁護士活用術
対象者:大田区在住者等
地図こちら

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2016年11月17日 木曜日

11月15日はいい遺言の日

今回のブログは、11月15日に行われた遺言・相続一斉相談会のご報告と雑感です。
11月15日いい遺言の日ということで、全国の信用金庫と日弁連等の共催で遺言・相続全国一斉相談会が行われ、当職も相談担当弁護士として参加してきました。
当日のチラシはこちらです。
こちら
チラシを見ても分かるとおり、信金中金が主催のイベントで、日本全国の信用金庫で遺言と相続についての相談が行われました。
このような法律相談は、各地域の信用金庫のお客様に対して提供される地元密着のサービスとしても有用ですし、取り組みが広がれば良いなと感じました。

当日の相談について、詳細はお話しすることはできませんが、いずれも相続の生前対策のご相談でした。
最近は、相続が始まる前にどのような対策が出来るのか、についての相談が多くなっています。
よく質問される生前・事前の対策は、具体的には以下のようなものです。
●あとでモメないように被相続人の財産管理を安全確実に行うにはどうしたらよいか。
●被相続人が遺言を書ける状態か否かの判断をどうするか。
●被相続人の会社・事業を継承すべきか否かの判断に迷っている。
●相続開始時の相続税をいかに抑えるか(土地の小規模特例、生前贈与、相続税納税資金の確保など)。


当事務所でももちろん生前の対策についてもご相談に応じております。

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2016年10月19日 水曜日

経営承継円滑化法の手続と問題点

今回のブログは事業承継円滑化法の手続現行制度の問題点について記載します。

前回のブログでは、「事業承継と遺留分対策」と題してブログを記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/08/post-56-1301665.html

前回、民法の原則からすると自社株が遺留分の対象となることへの対応策として、「除外合意」「固定合意」とこれとともに行う「付随合意」についてお話ししました。
これらの手続について、見てみます。
まず、後継者と遺留分権利者が予め遺留分算定にかかる合意をし、その合意について経済産業大臣確認家庭裁判所許可が必要になります。

最初の後継者と遺留分権利者の合意においては、除外合意とするか、または固定合意とするか、あるいはその組合せとするかなどの内容を定めることになります。
固定合意、すなわち遺留分算定の基礎財産に算入すべき金額をあらかじめ固定する合意を行う場合には、弁護士、公認会計士、税理士などによる相当な価額であることの証明書が必要になります(経営承継円滑化法第4条第1項第2号)。
また、合意書には実印で押印し、各当事者の印鑑証明が必要になります。
合意書の記載内容については、中小企業庁のホームページのマニュアルに記載のサンプルが参考になります
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2014/141217minpoumanual.pdf

次に、経済産業大臣の確認については、合意後1ヶ月以内に、申請書と添付書類を提出して審査を受けることになります。
経済産業大臣の確認が求められる趣旨は、経営承継円滑化法の要件を満たしていることを確認するためです(経営承継円滑化法第7条第1項各号)。
申請書等の書式は、中小企業庁のホームページにアップされています。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2014/141217Yoshiki.htm

経済産業大臣の確認を受けた後継者は、その確認後1ヶ月以内に家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
家庭裁判所の許可が求められる趣旨は、当事者のした合意が真意に基づいているかを確認するためです(経営承継円滑化法第8条第2項)。
これらは、後継者が単独で申請することができるため、遺留分放棄の制度よりは簡略化されています。
裁判所のホームページに申立書の記載例と必要書類の解説があります。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_29/index.html

しかしながら、平成27年12月末まで遺留分に関する民法特例についての利用実績は、日本全国で108例とのことで活発とはいえません(中小企業庁の発表)。
そして、そのほとんどが除外合意になっているとのことです。
なぜ、このような実績になっているかというと、以下の理由によるものと思います。
・人の生き死は予想通りいかないこともあり、先が読めないこと。
・旧代表者としても、誰にどのように経営の承継をさせるか決めかねている場合が多いこと。
・経済産業大臣の確認と家廷裁判所の許可の双方が必要となっており、手軽に作成・書き換えができる遺言と比べて手続の使い勝手があまり良くないこと。
・固定合意については、弁護士等の証明書が必要となっており、さらに手続上のハードルがあること。

この分野も随時改正がなされていますが、もう少し利用されるケースが増えてくれば、残された相続人の悩みの種も少なくなるはずです。

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