事務所ブログ

2016年8月10日 水曜日

事業承継と遺留分対策について

今回のブログは事業承継と遺留分対策について記載します。

被相続人が会社を経営していた場合、会社の相続は会社の株式の相続という形でなされることになります。
被相続人が特定の相続人や第三者に会社の経営を引き継いでほしいと考えて、仮に遺言で株式を引き継がせることを記しても、相続人の遺留分を侵害する限度でその遺言が無効となる可能性があります。
その場合、株式が遺留分減殺請求の対象となって他の相続人にも分散してしまい、会社の経営が後継者の思うようにいかないケースが考えれらます。
前回のブログでも、自社株式が遺留分減殺請求の対象となり、各相続人に分散してしまうケースを見ました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/08/post-60-1322287.html

小規模事業者をふくめた中小企業は日本全国に380万社あるとされ、全企業数の99.7%を占めます(中小企業庁ホームページ)。
また、その経営者の高齢化も目立ってきており、中小企業の円滑な事業承継は喫緊の課題となっています。

このようなケースを想定した制度としては、被相続人の生前に遺留分権利者が遺留分放棄の申立家庭裁判所に行うことが考えられます。
しかし、遺留分放棄のデメリットは遺留分権利者に自発的に申立てを行ってもらう必要があり、株式以外にも財産がある場合親族関係がこじれている場合などは相続人が自ら遺留分を放棄する内容の申立をすることは期待できないでしょう。

そこで、中小企業の事業承継を円滑に進めるために、平成23年に中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律が定められました。
対象会社は、3年間継続して事業を行ってきたことが必要であり、資本金と従業員の要件があります。株式会社のみではなく、合同会社、合名会社、合資会社も含まれます
ただし、上場会社や、医療法人・社会福祉法人外国法人は対象会社に含まれません

上記の遺留分対策としてできることは下記の2つです。
まず、自社株式の価額を遺留分算定の基礎財産に参入しないことができます。これを除外合意といいます。
後継者が旧代表者の生前に株式の贈与を受けると、民法上の特別受益として遺留分算定の基礎財産に算入され、遺留分減殺の対象となります。
これを除外合意の対象とすれば、遺留分減殺請求の対象とならなくなります

次に、遺留分算定の基礎財産に算入すべき金額をあらかじめ固定することができます。これを固定合意といいます。
後継者が旧代表者の贈与により取得した株式を遺留分算定の基礎財産に算入する場合の価額相続開始時の評価額です。
例えば、贈与時に5000万円であった株式の価値が相続開始時には2億円に上昇していた場合は、上昇後の2億円が遺留分算定の基礎財産に算入されることになります。
しかし、これでは後継者が企業の業績向上に努めた結果、株価の評価が上がってしまい遺留分の負担がより大きくなるという結果になってしまいます。
そこで、株式を固定合意の対象とすれば、遺留分に算定すべき株式の価額を5000万円にすることができ、上昇分を算入しなくて済みます。

また、付随合意として上記の除外合意と固定合意とあわせて合意できる事項があります。
後継者が旧代表者から株式以外に贈与を受けた財産についても遺留分算定の基礎財産に算入しないことを合意できます。例えば、事業用に供している不動産や現金などです。
また、非後継者が旧代表者から贈与をうけて取得した財産についても遺留分算定の基礎財産に算入しないことの合意ができます。これは、非後継者と後継者の衡平を図るための措置です。

この除外合意と固定合意はいずれか一方もできますし、双方の合意を使うことも可能です。
また付随合意はこれらに組み合わせて用いるものです。

そして、手続や問題点については次回のブログで述べたいと思います。


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2016年8月 8日 月曜日

遺留分について

今回は、遺留分について解説します
よく、「遺言を書くときには遺留分に気をつけましょう」とか、「遺留分減殺請求は1年間の期間制限があります」という話をご存知の方も多いと思います。
遺留分が相続人に残された最低限の権利であるという理解は、一般の方にも浸透しているようです。

遺留分は、最低限度の相続人間の公平を確保するために兄弟姉妹及びその子以外の相続人に保障された最低限の相続の権利のことをいいます。
被相続人による財産の処分によって、遺留分を侵害された相続人は、遺留分の額以上の財産を取得した相続人に対して、財産の返還を請求することができます(民法1031条)。
これが遺留分減殺請求権です。

遺留分の額の算出方法としては、遺留分算定基礎財産の2分の1(相続人が直系尊属だけの場合は3分の1。)が、相続人全体にとっての遺留分の額です(民法1028条)。
これに個々の相続人の法定相続分を乗じることによって、個々の相続人が有する遺留分の額を算出します(民法第1044条で準用する同法第900条)。
遺留分算定の基礎財産の価額は、以下の数式で求めます。
遺留分算定基礎財産
=「被相続人が相続開始時(死亡時)に有していた財産」+「相続前1年以内の生前贈与」+「特別受益」-「負債」


遺留分減殺請求の実例具体的なケースで見てみましょう。
[事例]
相続人:配偶者、子2人長男次男
被相続人の相続開始時の財産:不動産5000万円、預金2000万円
後継者である長男に対し、死亡1年前に贈与:自社株式2億円
負債:3000万円

[遺留分算定基礎財産の価額]
不動産5000万円+預金2000万円+自社株式2億円-負債3000万円=2億4000万円

[相続人全体にとっての遺留分の額]
2億4000万円×1/2=1億2000万円

[個々の相続人の遺留分の額]
配偶者=1億2000万円×1/2=6000万円
子2人=1億2000万円×1/4=各3000万円


このケースで、被相続人が遺言で、配偶者に不動産5000万円を遺贈し、長男に預金全額2000万円を遺贈した場合を想定します。
配偶者は1000万円遺留分額6000万円-実際の相続額5000万円の遺留分侵害を受け、次男は指定された相続分がありませんから遺留分額3000万円がまるまる遺留分侵害額となります。
配偶者と次男は、それぞれ長男に対して、生前贈与された自社株式2億円と長男の遺言による相続させた預金2000万円につき遺留分減殺請求をすることができます。
まず、遺留分減殺請求は、贈与よりも先に遺贈に対して行います(民法1033条)。
その結果、配偶者と次男長男に遺贈された預金2000万円に対してそれぞれ1000万円と3000万円の減殺請求をします。
配偶者と次男の遺留分侵害額の割合は1:3ですから、配偶者は預金500万円次男は預金1500万円につき、遺留分減殺により、返還を求めることができます
次に、配偶者の残りの遺留分侵害額500万円次男の残りの遺留分侵害額1500万円自社株式2億円分に対して減殺請求します。
これにより、自社株式は配偶者と長男と次男がそれぞれ1:3:362.5%:7.5%:90%)の割合で分割して取得することになります。

このように、後継者が贈与を受けた自社株式が相続人間で分散してしまうことになります。
この問題について取るべき対策は、また項を改めて述べたいと思います。

以上のように、遺留分侵害があるケースでは、具体的な計算やどの財産に侵害請求していくのかについては、結構複雑な問題となります


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2016年7月28日 木曜日

不在者財産管理人について

前々回のブログは、生死不明の人が戸籍上に残っている場合の手続の進め方について記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/07/post-57-1315341.html
前回のブログは、「死亡」と「失踪宣告」と「認定死亡」について述べ、東日本大震災の特例措置についても触れました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/07/post-58-1316707.html

相続人行方不明者がいる場合は、生存しているものの住所が明らかでない者として「不在者財産管理人」の選任を検討します。
「失踪宣告」との違いは「失踪宣告」が死亡した者として扱うのに対し、「不在者財産管理人」は住所・居所に戻ってきていないだけでまだ生きている者として扱う点で違いがあります。
例えば、長年、行方不明になっている者があるがまだ普通失踪期間=7年が経過していない場合に、その他の相続人が取り急ぎ遺産分割を行いたい場合には不在者財産管理人を選任して、不在者財産管理人を当事者として遺産分割を行うことになります。
それでも家裁の調査に要する期間などで相続財産管理人選任まで6カ月程度の期間は見ておいた方がいいでしょう。
不在者財産管理人が遺産分割協議や調停を成立させる場合家庭裁判所の許可が必要です。

不在者財産管理人は、行方不明者が現れるまでその職務が続きます遺産分割が終わったら職務が終わるわけではありません
しかし、行方不明者が一向に現れなければ、適宜の段階で「失踪宣告」を行うことになります。
その後、失踪宣告により不在者が死亡したものとして扱われ、不在者財産管理人の職務は終了します。
そして、失踪宣告を受けた者の相続の手続を行うことになります。
不在者財産管理人には、その請求により家庭裁判所の認める報酬が支払われることになります。


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2016年7月21日 木曜日

東日本大震災における死亡推定について

前回のブログは、生死不明の人が戸籍上に残っている場合に相続手続をどう進めるかについて記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/07/post-57-1315341.html
前回は相続開始の要件として、「死亡」と死亡したものとみなされる失踪宣告」はあるが、高齢者職権消除はこれにあたらないと述べました。

死亡」と「失踪宣告」以外にも、判例上相続開始の要件として認められているものとして「認定死亡」があります。
認定死亡というのは、戸籍法において定められている制度です。
戸籍法89条は、「水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。」と定めています。
このように認定死亡はいつでも使えるものではありません
水難や火災などの客観的に死亡したものと認定できる事変があったことが要件であり、官公庁の認定が必要になります。

そうすると、遺族として不在者の死亡の事実を認めてもらい、相続の手続を行うためには、失踪宣告を考える必要があります。
しかし、失踪宣告は人の死亡が不明な場合に、死亡したとみなす制度ですから、慎重かつ厳格な手続が定められています。
失踪宣告は、普通失踪特別失踪に分かれます。
普通失踪は「不在者の生死が7年間明らかでないとき」に利害関係人が家庭裁判所に請求できます。また手続も6ヶ月の公示催告期間が必要です。
特別失踪は「戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難んい遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争がやんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないとき」に利害関係人が家庭裁判所に請求できます。この場合の公示催告期間は2ヶ月以上必要です。
以上のように失踪期間と公示催告期間があり、失踪宣告も迅速に使える制度ではありません

平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、政府は被災者の遺族の保護を図るために、津波等による行方不明者の死亡の取扱いについて特別措置を設けました
例えば、遺体が見つからなくても死亡届を受理する運用がとられています。
法務省のホームページhttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00026.html
また、厚生年金国民年金などの死亡に係る給付未支給保険金、遺族基礎年金、死亡一時金など)については、行方不明となった者の生死が震災後3カ月間分からない場合には死亡したものとして推定して取り扱うこととされました。
すでに震災から5年が経過し、これらの給付の請求期間の問題も生じています。
以下のホームページを参照してください
死亡一時金についてはこちら
遺族年金についてはこちら


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2016年7月15日 金曜日

戸籍の消除と失踪宣告

今回のブログは、生死不明の人が戸籍上に残っている場合に相続手続をどう進めるかについて記載します。
民法882条は「相続は、死亡によって開始する。」と定めています。
通常、被相続人の死亡除籍謄本によって確認します。
除籍謄本は被相続人の死亡後に死亡届が役所に提出されることで作成されます。

しかし、誰も生存を確認していないけれども死亡届が提出されずに、戸籍が残っている、つまり戸籍上は生きている扱いになっているケースがあります。
そういう方は生きていれば120歳とか150歳とかいう年齢になることもあったりまします。
法定相続人で第2順位の直系尊属の生存を確認する場合に、ごく稀に見かけるケースです。

そのような場合に、死亡と同じ扱いにしてもらい、戸籍を抹消するためには失踪宣告を行う必要があります。
民法30条1項は、不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪宣告をすることができるとしています。
また、民法31条は、失踪宣告を受けた者は7年の期間が満了した時に死亡したものとみなすとしています。

これに対して、高齢者の職権消除といって、一定の年齢の高齢者で死亡届が提出されていないものについて役所内で戸籍を抹消する制度があります(戸籍法44条3項、24条2項)。
しかし、これはあくまで行政庁の内部処理ですので、相続開始の要件である「死亡」や死亡とみなされる「失踪宣告」のような効果は生じません
生死不明の方について相続人でないことを公的に明らかにするためには、やはり家庭裁判所に失踪宣告の申立を行う必要があります。

平成28年7月6日付の日経新聞では、遺産相続の手続を簡易化するため、法務省が戸籍情報をまとめて証明書を発行することの検討に入ったとの報道がありました。


戸籍の取り方見方についてこれまでブログを記載しました。
 http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/04/1-1-824693.html
 http://www.am-lawoffice.jp/blog/2014/04/post-4-827409.html
戸籍を遡って相続人を確定する作業は結構大変で時間もかかります。ですから国でそのような証明書が発行されれば、手続の負担は相当軽減されるでしょう。
しかし、上記のようなケースでは失踪宣告を申し立てる手間は軽減されません。そして、このような嘘のような本当のケースが弁護士に持ちこまれるのです。

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