事務所ブログ
2017年4月13日 木曜日
仮分割の仮処分(預金と遺産分割の関係)
本日は、昨年以来、各所で議論されている預金債権と遺産分割の最高裁決定に関するブログの第2弾です。
昨年、平成28年12月19日の最高裁大法廷決定では、「普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権は相続開始と同時に当前に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解する」と判断を下しました。
これに引き続き、平成29年4月6日の最高裁決定は、「共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない」と判断して、信用金庫に対する定期預金債権も、相続により当然分割されないことを明らかにしました(最高裁の決定はこちら)。
金融実務に混乱の無いよう、定期預金についても同様に当然には分割されない旨を明らかにしたと考えられています。
昨年のブログにも記載しましたが、
上記の最高裁の一連の決定により、今後は葬儀費用の支出、あるいは相続税の納税資金について、被相続人の預金から支出できないケースが多くなります。
また、特に緊急性の高いケースとして、特定の相続人が専ら被相続人から扶養を受けており、相続開始後に当該相続人の資力に余裕がない場合には深刻な影響が生じることになります。
例えば、家賃を負担してもらっていた相続人や生活費をもらっていた相続人等のケースです。
その対策としては、最高裁の裁判官が補足意見で触れている「仮分割の仮処分」の活用があります。
これは、遺産分割の審判を本案とする保全処分として、例えば、特定の共同相続人の急迫の危険を防止するために、相続財産中の特定の預貯金債権を当該共同相続人に仮に取得させる仮処分です(家事事件手続法第200条第2項)。
これを受けて、家庭裁判所内部でも、書式等の整備が進められているようです。ただし、仮分割の仮処分は遺産分割調停・審判が係属していることが要件です。
従って、現に遺産分割調停が進行してる案件であれば、使いやすいかもしれません。
しかし、まだ遺産分割調停を申し立てていないケースで、上記のように資力に余裕のない相続人のケースでは仮分割仮処分を求める前にまず遺産分割調停を申し立てなければならず、戸籍で相続人の範囲を調べて、遺産の範囲を調査し、申立費用を負担する、となるとどれくらいの案件で実際に救済されるかは不透明と言わざるを得ません。
やはり、上記のような相続開始後に生活の困窮が現実化する相続人がいる場合には、仮分割の仮処分に加えて、被相続人が生前の対策として、遺言の利用(遺言執行者を定めて速やかな遺言の実現を促す)や遺言代用信託、生命保険金など検討しておくことが肝要でしょう。
お問い合わせはこちらから
詳細につきましては、松井・森岡法律事務所まで(担当 松井)
電話 03-3261-7125
FAX 03-3261-7126
昨年、平成28年12月19日の最高裁大法廷決定では、「普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権は相続開始と同時に当前に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解する」と判断を下しました。
これに引き続き、平成29年4月6日の最高裁決定は、「共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない」と判断して、信用金庫に対する定期預金債権も、相続により当然分割されないことを明らかにしました(最高裁の決定はこちら)。
金融実務に混乱の無いよう、定期預金についても同様に当然には分割されない旨を明らかにしたと考えられています。
昨年のブログにも記載しましたが、
上記の最高裁の一連の決定により、今後は葬儀費用の支出、あるいは相続税の納税資金について、被相続人の預金から支出できないケースが多くなります。
また、特に緊急性の高いケースとして、特定の相続人が専ら被相続人から扶養を受けており、相続開始後に当該相続人の資力に余裕がない場合には深刻な影響が生じることになります。
例えば、家賃を負担してもらっていた相続人や生活費をもらっていた相続人等のケースです。
その対策としては、最高裁の裁判官が補足意見で触れている「仮分割の仮処分」の活用があります。
これは、遺産分割の審判を本案とする保全処分として、例えば、特定の共同相続人の急迫の危険を防止するために、相続財産中の特定の預貯金債権を当該共同相続人に仮に取得させる仮処分です(家事事件手続法第200条第2項)。
これを受けて、家庭裁判所内部でも、書式等の整備が進められているようです。ただし、仮分割の仮処分は遺産分割調停・審判が係属していることが要件です。
従って、現に遺産分割調停が進行してる案件であれば、使いやすいかもしれません。
しかし、まだ遺産分割調停を申し立てていないケースで、上記のように資力に余裕のない相続人のケースでは仮分割仮処分を求める前にまず遺産分割調停を申し立てなければならず、戸籍で相続人の範囲を調べて、遺産の範囲を調査し、申立費用を負担する、となるとどれくらいの案件で実際に救済されるかは不透明と言わざるを得ません。
やはり、上記のような相続開始後に生活の困窮が現実化する相続人がいる場合には、仮分割の仮処分に加えて、被相続人が生前の対策として、遺言の利用(遺言執行者を定めて速やかな遺言の実現を促す)や遺言代用信託、生命保険金など検討しておくことが肝要でしょう。
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投稿者 松井・森岡法律事務所