事務所ブログ

2016年10月19日 水曜日

経営承継円滑化法の手続と問題点

今回のブログは事業承継円滑化法の手続現行制度の問題点について記載します。

前回のブログでは、「事業承継と遺留分対策」と題してブログを記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/08/post-56-1301665.html

前回、民法の原則からすると自社株が遺留分の対象となることへの対応策として、「除外合意」「固定合意」とこれとともに行う「付随合意」についてお話ししました。
これらの手続について、見てみます。
まず、後継者と遺留分権利者が予め遺留分算定にかかる合意をし、その合意について経済産業大臣確認家庭裁判所許可が必要になります。

最初の後継者と遺留分権利者の合意においては、除外合意とするか、または固定合意とするか、あるいはその組合せとするかなどの内容を定めることになります。
固定合意、すなわち遺留分算定の基礎財産に算入すべき金額をあらかじめ固定する合意を行う場合には、弁護士、公認会計士、税理士などによる相当な価額であることの証明書が必要になります(経営承継円滑化法第4条第1項第2号)。
また、合意書には実印で押印し、各当事者の印鑑証明が必要になります。
合意書の記載内容については、中小企業庁のホームページのマニュアルに記載のサンプルが参考になります
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2014/141217minpoumanual.pdf

次に、経済産業大臣の確認については、合意後1ヶ月以内に、申請書と添付書類を提出して審査を受けることになります。
経済産業大臣の確認が求められる趣旨は、経営承継円滑化法の要件を満たしていることを確認するためです(経営承継円滑化法第7条第1項各号)。
申請書等の書式は、中小企業庁のホームページにアップされています。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2014/141217Yoshiki.htm

経済産業大臣の確認を受けた後継者は、その確認後1ヶ月以内に家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
家庭裁判所の許可が求められる趣旨は、当事者のした合意が真意に基づいているかを確認するためです(経営承継円滑化法第8条第2項)。
これらは、後継者が単独で申請することができるため、遺留分放棄の制度よりは簡略化されています。
裁判所のホームページに申立書の記載例と必要書類の解説があります。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_29/index.html

しかしながら、平成27年12月末まで遺留分に関する民法特例についての利用実績は、日本全国で108例とのことで活発とはいえません(中小企業庁の発表)。
そして、そのほとんどが除外合意になっているとのことです。
なぜ、このような実績になっているかというと、以下の理由によるものと思います。
・人の生き死は予想通りいかないこともあり、先が読めないこと。
・旧代表者としても、誰にどのように経営の承継をさせるか決めかねている場合が多いこと。
・経済産業大臣の確認と家廷裁判所の許可の双方が必要となっており、手軽に作成・書き換えができる遺言と比べて手続の使い勝手があまり良くないこと。
・固定合意については、弁護士等の証明書が必要となっており、さらに手続上のハードルがあること。

この分野も随時改正がなされていますが、もう少し利用されるケースが増えてくれば、残された相続人の悩みの種も少なくなるはずです。

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投稿者 松井・森岡法律事務所

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