事務所ブログ

2016年4月25日 月曜日

相続人の地位を争う場合

前回は相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議の注意点を記載しました。
http://www.am-lawoffice.jp/blog/2016/04/post-53-1287711.html

今回のブログは相続人の地位を争う場合にどうするかについて記載します。

まず、相続人であるかどうかは戸籍謄本で確認します。
相続人の地位を争うというのは、例えば、以下のケースが考えられます。
 ・相続人であると主張する子が被相続人の実の子ではない
 ・被相続人の生前の結婚が無効であるため、配偶者は相続人ではない
 ・被相続人は養子縁組をしていたが、その縁組が無効であるため、養子に相続権がない
などとして、子・配偶者・養子として戸籍上は相続権があが、その親族関係が法的には否定されるべきものであるので、その結果相続人の地位を失うことを主張したいというケースです。

まず、最初の子のケースです。
昔は、子の無い夫婦が他人の子供を実子として届け出て養育するケースなど、他人の子を実の子として虚偽の出生届を役所に提出することがありました
こういうケースを「藁の上からの養子」といいます。

戸籍上「子」となっている相続人の相続人の地位を争う場合の手段としては、親子関係不存在確認の訴えが一般的です。
これは民法上の規定はありませんが、過去の最高裁の判例において認められた訴えの類型です。
最近のDNA鑑定技術の向上によって、親子であるか否かが科学的に高度な正確性をもって判定できるようになったことから相続の場面においても利用されるようになっています。

しかし、相続が発生したあとで、それまで長年にわたって「子」として養育されてきた「相続人」が「子」であることを否定されるとによって被る精神的打撃、社会的不利益は極めて大きいものがあります。
そこで最高裁判例(最判平18.7.7)は、親子関係がDNA鑑定等により存在しないことが明白となっても、以下の事情を考慮して親子不存在確認請求が権利濫用として認められない場合があることを明言しています。
 ① 実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ
 ② 判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより被告及びその関係者の受ける精神的苦痛、経済的不利益
 ③ 原告が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機、目的
 ④ 実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に原告以外に著しい不利益を受ける者の有無
 ⑤ 諸般の事情


これまでの親子関係不存在確認請求は、上記の判断基準に従って権利濫用として認められない場合が多くありました。
しかし、名古屋高判平20.12.25のケースでは、権利濫用にはあたらないとして親子不存在確認請求を認容する判断を下しました最高裁においても上告棄却、上告受理申立は不受理として確定)。
このケースが他のケースと異なるのは、被告本人が親子関係の不存在を知っていたこと被告が戸籍上の親から生前に経済的な支援を受けていたこと戸籍上の親の遺産分割手続が未了であったこと(遺産分割を覆す必要が無く法的安定性を害さないこと)、などです。
事実認定の勝負の面もありますが、親子関係不存在確認の訴えの提起の際に参考にすべき事例といえます。

なお、昨年メディアで大きく取り上げられた喜多嶋舞と大沢樹生の間の裁判も東京家裁において争われた親子関係不存在確認請求訴訟でした。この事件では、判決により長男と父との間の親子関係が否定されました。
ただし、このケースは相続ではありません。「親子」の当事者が生存しているケースでの親子関係の存否が争われたものです。従って、上記の権利濫用の主張がなされるケースとは異なりますのでご注意ください

次回は、離婚無効・養子縁組無効などについて見てみたいと思います。


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投稿者 松井・森岡法律事務所

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